シンスケを説明する冠は、凄いフレーズばかりだ。
東京を代表する
居酒屋のお手本
大人の居酒屋
大正時代から続く由緒ある
呑む者を試す
凛とした
いつか行こうと想っていたが、どうも敷居が高かった。
この店の良さが分かるか分からないか?店の格に自分がついて行けるか?そろそろ、自分を試してみる時が来た。
17時丁度に、戸が開く。
客は静かに白木のカウンターに順序良く座っていく。俺達は、広さを優先し、カウンターに平行して並ぶテーブル席を選ぶ。この店では、カウンターで呑むのが粋であることは重々承知しているが、歩き疲れが勝ってしまい広さを優先してしまった。
まずは、ビール。ハートランドとエビスを選ぶ。強烈に美味い。お通しは、さっぱりとした酢の物。初夏を感じる。
この店は、写真撮影禁止。言葉だけで、この店の雰囲気や世界観を伝えるのは不可能である。やはり、実際に体験するしかない。
さて、メニューを見る。季節物と通年の肴があるようだ。江戸の初夏をテーマに肴を選んでいく。
黒マグロのぬた。
黒マグロの入荷は今月いっぱいまで、つまり今日が最後とのこと。名残を惜しみつつ食べる。老舗だけあって、ぬたの味は格別。文句無く美味い。
シンスケ風ポテトサラダ。
初めて行く店では必ず頼むポテサラを試す。店の名を冠するからには、と期待して食べると、ショウガが入っていて、さっぱり味。夏仕様なのか通年仕様なのか聞けなかったが、暑い季節に合う一品。
谷中ショウガ。
何とも言えない良い辛さ。こういう老舗では、通ぶって是非味わっておきたい。
冷酒にチェンジする。日本酒の店と謳っているが、銘柄は両関のみ。ただ美味い酒なら他にいくらでもあるが、1種類しか置かない度胸は素晴らしい。こういう居酒屋は最近少ない。
シンスケ風メンチカツ。
これも店の名を冠するからには、と期待して食べると、挽き肉では無く、切り落とした肉と軟骨が入っていた。普通に美味い。
初夏の炊き合わせ。
初夏のという冠に釣られて頼む。鰹、ふき、こごみ、ゴボウなどが入って、鰹の出汁が良い仕事をしている。強烈に美味い。
香草と切干し大根の胡麻酢和え。
ウドとミツバで味付け。これも強烈に美味い。
ニシンの山椒漬け。
冷酒のアテに最高と思い頼んで正解。噛むほどに味が出る。文句無く美味い。
カウンターには、一人客と二人客が半々くらい。酒を呑んでも誰もが怖いくらい静かにしている。行儀がいい。
入店して1時間を過ぎたので、デザートを頼む。江戸の酒屋で長居は禁物だ。
塩ミルクアイスクリーム。
スイカにかける塩と同じ原理で、塩が甘さを引き出している。
南高梅シャーベット。
スッキリして強烈に美味い。
〆て2人で、9.4千円。
ここより美味いものを出す店は、他にいくらでもあるかも知れない。
しかし、この凛とした空気、あたかも早朝の神社のような空気の中で江戸の肴をアテに一献傾けられる店は、唯一無二であろう。この空気を味わいにまた来よう。