夢を見ていたのかも知れない。御宿駅からワゴン車に乗り方角も分からぬまま山を登り、住宅街に佇む一軒の民家に辿り着く。店というか民家の中に入ると主人の家族、お孫さんまでもが総出で暖かく迎えてくれる。親戚の家に来たみたいだ。最高に美味い魚と美味い酒。主人の魚談義。冷酒で酔いが回り始めた頃、「そろそろ」と主人に言われるがまま車に乗り近くの小川で降ろされる。蛍。無数の蛍が舞っている。見上げれば満天の星空。一緒にいた客が皆童心に帰る。また車に乗る。違う小川で降ろされる。そこでも蛍。何とか写真に収めようとするが暗すぎて撮ることができない。これは夢なのか。店に戻る。また美味しい魚と酒が待っている。続ける。どれだけ呑んだか覚えていない。電車の時間に合わせ駅まで主人に送ってもらう。千葉行きの電車に乗ったところで夢から覚めた。
太田和彦氏激賞の「舟勝」。呑べいの間で生きる伝説になっている居酒屋。断酒を始めた1ヵ月前、電話で予約。体調万全にし、ようやく訪れる時が来た。17時半、御宿駅に到着。店は駅から徒歩だと20分、必ず迷うであろう場所にあるので主人が御宿駅まで車で送迎してくれる。
初めて会う者を一瞬で虜にする主人の笑顔と話術。どの分野でも一流に上り詰めた人特有の人懐っこさと謙虚さ、表に出さない自信がオーラとして漂う。本物だ。駅から車で5分。高台の住宅街にある店の前で降ろされる。そこにあるのは千葉県No.1の居酒屋。
店に入り、座敷かカウンター、どちらでも良いと言われ、迷わず主人の前のカウンター一等席に座る。まずは、生ビールで口の中をリセット。高台にあるため、網戸から入る海風が心地よい。夏でもエアコンなしで楽しめそうだ。
開店35周年。「全てお客さんのお蔭」と主人は謙遜するが、主人の努力の賜物であろう。料理と酒を楽しむ客に主人は「(味は)大丈夫ですか?」と必ず声を掛ける。これだけ絶賛される立場になっても尚、謙虚な姿勢を続け客の反応をフィードバックする。頭が下がる思いだ。
刺し盛り。全部美味いが、特に「だるま」と呼ばれるメバチマグロの子供と鯵の美味さに感動。
アルコールは、生ビール→芋焼酎→冷酒と進める。中でも冷酒のラインナップが凄い。初めて呑むものしかなく、勘を頼りに選んでいく。中でも十四代の生詰めが最高。普段、日本酒を呑まない妻もどんどん呑んでいる。本物に出会うと人は変わる。
この店の名物、酢なめろう。この季節はトビウオを使う。氷と酢で〆て表面が白くなったら食べ頃とのことでしばらくお預けをくらう。
Before
After
もちもちで粘りがある。普段食べているなめろうとは明らかに別物。
この辺で冒頭のホタル観賞へ。(時系列は正確ではない。酔っていたので。)
カサゴの煮つけ。味が濃すぎず薄すぎず丁度いい塩梅。
ヒラマサの白子。これは市場には流れない貴重な一品。冷酒と合う。山葵の香りもいい。もう堪らない。
〆のおにぎりと貝汁。お米は御宿産のコシヒカリ。米が美味い。
東京からでも日帰り可能。呑べいの桃源郷は意外と近い。
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