体たらく日記

呑、喰、旅。世のため人のためにならない体たらくの日記。

スペイン旅行記⑥ バルセロナ ミシュラン1星獲得日本食レストラン「Koy旬香」で情熱の3時間半

バルセロナにある日本食レストラン「Koy旬香」。
世界ふしぎ発見で紹介されているのを観て日本から予約を入れる。
スペイン旅行最後の晩は、スペインの食材を使いながら和の基本は守る料理、日本では味わえない和食を楽しみたいと思った。
開店時間の夜8時半に店に入る。名前を告げ通された席は、この店のオーナーシェフ松久秀樹さんの板場の真ん前、カウンター一等席。日本から電話で予約を入れた際、カウンターかテーブルを選べると聞いて、迷わずカウンターを選んだ甲斐があったというもんだ。松久さんの顔はTVで観ていたので直ぐにわかる。カウンター席の場合、コースのみで2種類のコースから選べる。スペイン最後の晩なので後悔しないよう高い方のコースを選ぶ。前菜の盛り合わせから始まり、サイフォンで炊かれた出汁が一品として出てくる。この一杯の飲んだ時、日本人に生まれて本当に良かったと感じた。「この味、この味。ほっとする。」と妻。「日本では当たり前のことだが、スペインでは出汁の概念が無かった。」と松久さん。スペインでは、寿司や天ぷらは有名だが、出汁は知られていなかった。日本食の良さ、出汁をスペインの人達にももっと知ってもらいたいと思った。本来の日本の加減で提供すると、単なるお湯にしか感じてもらえなかったと言う。日本人からすれば少し強めの出汁だが、スペイン料理に疲れた体に心地よい。「最近では、ようやくスペインの人達にも出汁が知られ始めてきた。」9時を過ぎたあたりでほぼ満席。調理場もフル回転。松久さんも次々に指示を出す。こんなに忙しいのに私達との話にずっと付き合って下さる。「東日本大震災の映像をTVで観ていた時、涙が止まらなくなった。日本を応援したい。スペイン人にもっと日本を知ってもらいたいとの想いからこのお皿で提供し始めた。」

日本列島の形が掘り込まれた御造り用の皿。スペインの作家に特注で頼んだとのこと。鮪の刺身は、赤身、中トロ、大トロと頭の部位。どれも上品な味で美味しい。

日の丸。牛のタタキと日本のお米(確か秋田こまち)を炊いた上に海苔とトリュフを乗せて風味を出す。

松久さんの話にぐいぐい引き込まれる。料理人を志した切っ掛けや、スペインで自分のお店を持ち、2号店となる「Koy旬香」を出すまでの経緯など、ユーモア、知性を感じる巧みな話術で我々を魅了する。料理に使っているスペインの食材についても豊富な知識で紹介。料理は、もちろん美味しいし、繊細な盛り付けで目でも楽しませてくれる。和食ではあるが、フォアグラ、キャビア、トリュフ、三大珍味全てが使われていた。客の9割はスペイン人とのこと。スペイン人が好む料理に仕立てていると思われるが、和の基本は守っている。どの料理にも出汁の風味を感じる。〆は握り寿司と巻物。そしてデザート。
気が付けば、12時。あっと言う間の3時間半。食事に3時間半も掛けたのは初めてだ。帰り際、松久さんがタクシーが捕まる場所まで見送ってくださり、タクシーを止めホテルの場所を告げてくださる。最後の最後までお世話になり、握手をして別れた。レストランでこれほど充実した時間を過ごせたのは何年振りだろう。松久さんの目は、優しさと自信が見事に同居した何とも言えない良い目をしていた。

お店のHP→http://www.koyshunka.com/Koy_Shunka/home.html