白昼夢を見ていたのかも知れない。古いカーナビは全く役に立たず、インスタの道案内を頼りに小道を進む。
良く分からないまま畑脇の空き地に車を停めて、
猛烈な日差しの中、農家カフェを探す。
草が凄いことになっているけど、
たぶん、
ここだ!
イタリアはヴェローナ出身のタニアさんが営むTania’s cafe。なぜここで?
千葉の古民家なのに、厨房はイタリアンテイスト。隣の客はインド人家族。ここはどこなのか、訳が分からなくなってきた。
メニューは口頭で告げられる。良く分からないまま夢心地で適当に答える。スターターは、夏のスープと自家製フォカッチャ。優しい味だ。
次は夏野菜の煮込み。野菜の味を殺さない最小限の味付けが嬉しい。
オレのメイン、ほほ肉煮込み。歯が無くても喰える柔らかさ、肉の旨味もしっかり。
連れのメイン、ジェノベーゼ。もちろんジェノベーゼソースは秀逸だし、何より茄子が甘くて猛烈。
自家製チョコレートケーキと梅ソーダもいい。
そして、今日はコンサートの日らしい。千葉の畑の中の一軒家で、東京ヨハンソンというプロの演奏を聴けるなんて。しかも日本では珍しい北欧音楽。スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパとマンドー ラによる優しく柔らかな北欧の音色。ますます訳が分からなくなってきた。
帰り際、隣のインド人家族は船堀在住、タニアさんは東小松川在住と知る。両方オレの近所じゃん。そもそもタニアさんはここに居を構えているのかと思ったら週末だけらしい。タニアの畑はどうしているの?というツッコミはやめて、謎のままにしておいた。
cafeを出ると、日の位置が変わっていた。街灯は無く、夜は恐ろしいほどの暗闇に包まれるのだろう。
不動産屋に条件を言って物件を探してもらい、東京から一番近い場所がここだったらしい。テキトーに生きている様で何故か上手くいく、イタリア人らしい人生だと思った。