湯河原に来た。とても大事な用があって。
高齢ご夫婦が営む王ちゃん。失礼ながらとても仕事ができる体調ではないのに全力で続けるご夫婦。その姿に仕事とは何か、生きるとは何かと自問せずにはいられなくなる。
手作り餃子(400円✖️2)。注文を受けてからおばあちゃんは奥の部屋に入って餃子を包み始める。歩くのも非常につらそうなのに作り置きはしない。おばあちゃんが一生懸命包んだ餃子をおじいちゃんが受け取り蒸し焼きにする。こんなに崇高な夫婦の共同作業を見たことがない。餡は野菜とニンニク多めでタレ無しでも喰える味付け。猛烈に美味い。
ワンタンメン(900円)。注文を受けてからおじいちゃんはワンタンを包み始める。ここでも作り置きはしない。麺を茹で始める。おじいちゃんは手先がつらそうで、さえ箸をうまく持てない。そんな自分に苛立ちながらそれでも続ける。仕事とは何か、生きるとは何か。
これだけの情熱が注ぎ込まれているのだから美味いに決まっている。
カツ丼(950円)。注文を受けてからおじいちゃんは冷蔵庫から肉の塊を取り出し、切り分ける。玉ねぎも切り出す。ここでも切り置きはしない。生産性なんて考えない。目の前の一つ一つの仕事に全力で出来る事を。
ネットでは世界一美味い王ちゃんのカツ丼と称されている。カウンターでご夫婦の情熱を感じれば、誰もがそう思うに違いない。尊敬という言葉が安っぽく感じるほど、ご夫婦の姿は神々しかった。