人は、物語に魅かれる動物である。
と言ったのは、歴史上の偉人では無く、体たらくこと私である。
単に、強い/弱い、速い/遅い、美味い/不味い、などの単純な指標だけでは無く、その裏に隠された他には無い物語性を知る事で人は虜になり、虜になった人々が一定数を超えると伝説として伝わって行くのだ。
「舟勝」は、物語性があり既に伝説となっている居酒屋であるが、その真髄については、初回訪問記に長々と書いたので参照されたい。
さて、その伝説の「舟勝」を再訪である。
この店はお任せのみ。黙って座っていれば極上の肴がどんどん出てくる。
椅子に座ると直ぐに先付けとして色々な肴が出てくる。
中でもカジキマグロの肝の味噌漬が最高に美味い。漁師町ならではの肴だ。
刺し盛り。
どれも美味いが、特に生メバチマグロと寒ブリが最高。今年の鰤は、ここ数年で最高の質とのこと。
刺身に使う醤油にも拘っている。
玄蕃蔵は、江戸の往時から最良の仕込み方法とされている「寒冷期仕込み」を行う。 一年に一度、冬を迎える頃に仕込んだ諸味は、低温の冬から春、そして夏へとゆるやかに気温が上昇する時期に理想的な醗酵、熟成を続け、9月9日に蔵出しするという。醤油一つとっても物語性のある品を使っている。
鯵の酢なめろう。
この店の名物。酢と氷で〆て表面が白くなってからが食べ頃。もちもち感が凄い。冷酒が進む。
烏賊の沖漬。
こちらもこの店の名物。肝の旨味と絶妙な塩加減が冷酒に合う。
ふきのとう、白身魚、椎茸の天婦羅。
ふきのとうの苦味が冷酒に合う。
鬼カサゴの煮付け。
優しい味。
〆のご飯。
お米は御宿産コシヒカリ。最高に美味い。お椀は、平目のあら汁。堪らない。
舟勝は、料理が美味いだけでは無い。主人の日本酒へのこだわりは半端では無く、日本酒あっての料理とも言えるし、料理あっての日本酒とも言える。日本酒の選定は、全て主人に任せた。どれも初めて聞く銘柄であり、メモも取っていなかったので名前はすっかり忘れてしまったが、最高に美味かった事だけは覚えている。
〆て2人で1.2万円。
伝説の居酒屋は、今日も凄かった。