いわゆる山谷のドヤ街にその酒場はある。
色々と面倒くさいルールがあるのに、遠くから訪れる者が絶えない大林。
呑んできた人禁止、3人以上禁止、写真撮影禁止、スマホを外に出すのも禁止、大きな声禁止がルールだ。
15時開店を少し回った時間に戸を開ける。奥に大きな神棚。年季の入ったこの字カウンター、割と大きな空間。客はちらほらいるがみんな押し黙り、ピンと張り詰めた空気。まさに神社の空気感だ。
親父がカウンターを守り、女将が料理を作っている。大事なのは親父との距離感を掴む事。そのミッションは困難を極めた。静かに丁寧に焼酎ハイボールを頼む。何も言わず親父は奥に行き焼酎と氷の入ったグラスと炭酸水を持って来て炭酸を注いでくれる。お通しは悲しくなるほど質素な葉の漬物。タイミングを測り牛もつ煮込みを頼む。悪くないが感動する程でも無い。次は、こういう江戸の古典酒場は鮪にこだわっているハズと予測し鮪刺し頼む。地雷を踏んだ。スーパーの見切り品レベルだ。最後に金平牛蒡とウイスキーハイボール。この酒場のピンと張り詰めた唯一無二の空気こそが最高のアテだった。
〆て1人で、2.1千円。次の店へ。